小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「管理」と「マネジメント」の間にある微妙で大きなニュアンスの違い
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「マネジメント」という言葉を日本語で表現しようとした時、一般的には「管理」と訳されることが多いと思います。「マネージャー」といわれれば、「管理者」「管理職」と言い換えられることが多いでしょう。
この「管理」という言葉の意味を調べてみると、「ある基準などから外れないように、全体を統制すること」とあります。
組織マネジメントにおいて、確かにそういう側面はありますが、「マネジメント」という言葉の本来のニュアンスからすれば、決してそれだけではなく、”現状評価・分析“、“計画立案・実行”、“判断・選択”、“人員配置”、“部下指導・育成”、“関係調整”、“指揮・統制”、“動機づけ・モチベート”その他様々な要素を含んでいます。
これら組織運営に必要な概念を統合したものを、本来の「マネジメント」と考えるのが実態に近いはずです。多くの要素を駆使して組織を回していくことが「マネジメント」だということです。
しかし、実際に現場で働くマネージャー、管理職の中には、本来の意味での「マネジメント」ではなく、限りなく「管理」に近い仕事が自分の役割と理解し、それに終始している方がいらっしゃいます。
もしも「ある基準などから外れないように、全体を統制すること」だけがマネージャーの役割だとすれば、人間があらかじめ決められた通りにきちんと動いているかををチェックする、確認することが仕事ということになり、そこで働く人間に対する捉え方は、工場のラインで動く機械、その機械の歯車と同じ認識になります。
しかし実際にはそうではありません。人間は個人個人で能力も性格も違い、同じことを言えば同じように働くとは限りません。能力が高い人も低い人も、やる気がある人もない人もいます。そんな人たちをすべて含めて、手元にいる人材リソースを駆使して業務に当たるのが、マネージャーの本来の姿です。
そういう意味では、「管理」というのは、“見張り”に近く、「マネジメント」は“やりくり”に近いでしょう。そして、ただ見張っているだけでは、本来の「マネジメント」ではありません。
「マネジメント」という言葉が「管理」と訳され、自分は「管理者、管理職」と呼ばれれば、そう考えてしまうのも無理はありませんが、組織を「マネジメント」するマネージャーの役割としてはかなり不足です。
言葉というのは、その表現のイメージによって、捉え方が変わってきます。「マネジメント」の場合は、これを「管理」と言うことで、本来のニュアンスとは違ってしまっている印象があります。またその違いは意外に大きいようにも感じます。
特に人と関わる中での言葉での表現のしかたというのは、とても大事な位置づけにあるものだと思います。
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