小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「やりたい仕事」と「向いている仕事」は同じではない
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会社を辞めていってしまう人が、その理由として挙げる中に、「この仕事は自分に向いていない」というものがあります。
こういう人に、「では何が向いているの?」と尋ねてみた時、明確な答えがもらえることはそれほど多くありません。なぜ答えられないかという理由は明らかで、「向いている仕事」というのは、自分の主観ではなかなかわかりづらいことだからです。
会社にいる限り、やりたくない仕事や理不尽な異動などに遭遇することがあると思いますが、初めは無理やりの命令で、気が進まずイヤイヤで始めたような仕事が、後になって、自分の主要な経験の専門分野になっているようなことがあります。
仕事の適性というのは、実際にやってみなければわからないという面が多分にあります。自分の意志であれば絶対に踏み込まないようなことでも、他人からの勧め、後押し、命令、強制などがあって、やらざるを得なくなるようなことがありますが、その結果、思ったほど嫌ではない、すんなりなじめた、他の人よりも飲み込みが早かったなど、意外に向いている仕事だったということは、結構あるのではないでしょうか。(もちろんこの逆の場合もあるでしょう。)
このように、本人がいう「やりたい仕事」というのは、結局は自分が好きなこと、興味があることであり、それが果たして「向いている仕事」なのかどうかは、自分だけでは判断しづらいことで、他人からの客観的な目が必要であるということです。
自分のキャリアというのは、意外に周囲の人や偶然の要素に左右されるものだといえるのではないでしょうか。
こういう見方をすると、辞める理由で「この仕事は向いていない」と、当事者である本人が言うのは、“向いていない”のではなく、“やりたくない”のだと思います。
事実、私がこれまで見てきた中でも、「この仕事は向いていない」といって全くの別業界に転職したものの、数年後にまた元の業界に戻り、以前とほとんど変わらないような仕事をしている人が何人もいます。
「向いていない」と言って辞めてはみたものの、自分の経験が活かせるのも、周りから評価されるのも、結局はそれまでやっていた仕事で、もともとの仕事が実は自分の一番向いている仕事だったことに気づいてまた戻ってきたということでしょう。
これは、「やりたくない仕事」と「向いていない仕事」を混同していたということになるのだと思います。
「やりたい仕事」というのは、本人が自分の意志で決めることだと思います。
これに対して「向いている仕事」というのは、実は他人が決めるという要素もあるということです。このあたりを理解することができれば、自分のキャリアが少し変わって見えてくるのではないかと思います。
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