小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ意外に多いと感じる「ブラック企業」に含まれる主観の要素
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いろいろな方々との会話の中で、「ブラック企業」が話題になることがあります。
そこで、「昔の働き方を今になって思えば、自分の会社もブラック企業だった」というような話をする人が、思いのほかたくさんいらっしゃいます。
お話を聞いていると、とにかく早朝から深夜まで、休みの日も当たり前のように働かされていたというような「長時間労働」にまつわる話と、上司からのバカヤロー呼ばわりや浴びせられる暴言などの「パワハラ」に類する話の、大きく二つの話題が多いようです。
内容を聞くほど、確実にNGと思われるような行為がほとんどでしたが、皆さんがわりと共通的におっしゃるのは、「当時はそれが当たり前と思っていて、おかしいなどと思うことはなかった」ということでした。
これには「他の人もみんな同じ」という周りの環境、比較対象がないという情報の問題が大きかったようで、要は他社のことは知らないし、社会人というのは誰でもみんなこんなものだと思っていたということでした。
ちょっと語弊はありますが、「洗脳されている」というところに近い感じがしました。
最近は、ブラック企業だと批判される企業がたくさんあります。法律違反が当たり前のような、かなりひどい会社もあるので、それは批判されて当然だと思いますが、その一方で、「この程度でブラック企業と言われてしまうのか」という内容のこともあります。
ネット上の一方的な情報で批判されていたり、その手の情報に敏感になりすぎて、就職活動で身動きが取れなくなっていたりする学生の話も聞きます。これは、逆の意味で「洗脳されている」というような感じがします。
ある会社の社長が、「うちの会社は“働きやすい会社”とは言えないかもしれないが、“働きがい”はある」とおっしゃっていました。
特にベンチャー企業などで、会社を立ち上げたばかりの時期は、がむしゃらに仕事に集中しなければ、立ち行かなくなってしまうことがあるのも事実です。その気持ちを支えているのは、在籍している社員が共通して持っている“やりがい”という主観です。
過重労働もサービス残業もハラスメントも、絶対にあってはなりません。
その一方で、「ブラック企業」か否かという点には、その人その人による感じ方の違い、主観の要素があることも忘れてはならないと思います。
「ブラック企業」の社名公表の動きがあり、対象になるのは相当に悪質な企業だと思われますが、もし公表されるにしても、それがただのレッテル貼りにならないでほしいと思っています。
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