小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「そんなの常識!」で片付けてしまう思考停止
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自分の常識に照らしてみて、相手の行動がどうしても受け入れがたい時があると思います。礼儀作法に関することの場合は、年齢に差がある関係で特に起こりがちなように思います。
最近の話ですが、ある会社の社長が、電話応対がなかなかスムーズにできない新入社員を指して、「これくらいのことは常識だと思うんだがなぁ…。」という愚痴をこぼしていました。まぁその気持ちはわかります。
ただ、今のように子供の頃から自分専用の携帯電話を持っている時代では、他人に電話を取り次ぐということを、もしかすると今までの人生で一度もしたことがないことも考えられます。日常生活の中で電話応対を経験できなくなっていると考えると、これを常識というのはもはや難しいかもしれません。
私自身も、特に公共マナーや食事のマナーなどでは、他人の行動が気になることがありますが、これは必ずしも若いからダメということはありません。
喫煙マナーや携帯電話のマナーなどは、どちらかといえば中高年以上の人たちの方が、あまり良くないように思います。ただ、これもあくまで私が思っていることなので、他の人から見れば、また感じ方は違うでしょう。
以前、中国で行われた卓球の世界大会で、観客のマナーについて書かれた記事を読んだことがあります。とにかく試合会場がとてもうるさいらしく、携帯の着信音はあちこちで鳴るし、みんな平気で大声で話しているし、それを注意する人もほとんどおらず、日本の感覚からすると、これでは選手が競技に集中できないのではないかと思うほどなのだそうです。
ただその反面、フラッシュ撮影に関してはものすごく厳しく、フラッシュがどこかで少しで光ろうものなら、すぐに係員が飛んできて注意され、周りの観客からも「何をしているんだ!」という非難をされるのだそうです。
どうも、音ということに関してはかなり寛容で、それが競技の妨げになるとはあまり感じず、一方でフラッシュのような視覚的なものに関しては、かなり敏感に捉えているということのようで、お国柄によって、いろいろな考え方があるという内容の記事でした。
この状況は、私たちの常識とはたぶん違いますが、だからといって「常識がない!」と批判することはできないと思います。
「常識」というのは便利な言葉で、それがみんなにとって共通の価値観と思ってしまいますが、実際には決してそうではなく、100人いれば100通りの常識があります。
ですから「そんなの常識!」と言ってしまっては、何の問題解決にもなりません。
「常識」という言葉を使っての他者批判は、私はただの思考停止でしかないと思います。
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