小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「上が決めたことだから・・・」で本当に良いのか
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いろいろな会社の方とお話をしていると、役員、管理職、一般社員の区別を問わず、「上が決めたことだから・・・」という言い方をされることが、思いのほかよくあります。
もう少し言葉を付け足すと、「この決定は自分では納得できないけれど、上が決めたことだから従わざるを得ない」ということです。
私自身も組織に属していた頃はそういうことがありましたし、基本的に組織というのはそういうものだということも言えます。
企業風土によって、トップダウンとボトムアップのバランスというのはまちまちですが、「上が決めたことだから・・・」という発言が多いのは、やはりトップダウンの割合が高い企業です。
もちろんトップダウンの指示命令は、それがなければ組織ではありませんから、当たり前のことではありますが、私が気になるのは、こういう企業の多くの社員が、自分では決めようとしない、自分では考えないなど、要は思考停止のようなことを多々見かけることです。
これはボトムアップを認めない企業体質にも問題がある反面、特に管理職クラスが、このトップダウンを、都合よく利用しているようなところもあります。「自分が決めたことではない」といって、責任回避の言い訳にしているようなことです。
「意見を言っても変わらない」「自分が提案してもどうせ通らない」「結局決めるのは上の人」などという言葉が出てきますが、結局はすべて同じようなことです。
会社が求める理想の人材像として、「自律」というキーワードが挙がることはとても多いですが、この「自律」のために必要なのは、「自分で考えて自分で決めて、自分で実行して自分で責任を取る」というサイクルを繰り返していくことです。
ただ、トップダウンが強い企業であると、この「自分で考えて自分で決めて・・・」という部分が少ないために、「自分で実行する」というパワーが弱まり、「自分で責任を取る」という納得感が薄れます。社員が「自律」できない原因には、こんな悪循環があると思います。
「うちの社員は自分で考えようとしない」「実行がなかなか伴わない」「リーダーシップを取ろうとしない」など、経営者からの悩みを聞くことは多いですが、中には経営者自身がそう仕向けてしまっていると思えることもあります。
社員の側でも、誰かが決めてくれることに慣れてしまっていて、それが楽だと思っていたり、経営者が納得しそうな提案しかしないような状態になっていることもあります。
「自分で考えて自分で決めて、自分で実行して自分で責任を取る」というサイクルを繰り返していくには、トップダウンとボトムアップにある程度のバランスが必要です。
もしも「上が決めたことだから・・・」という言葉が多いような印象があるならば、今一度そのバランスを見直してみる必要があると思います。
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