小笠原 隆夫
オガサワラ タカオ「隠す」より「どうやって伝えるか」
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少し前の話になりますが、日本野球機構が統一球の仕様を変更したことを隠していたことが批判を浴びました。単に隠していたというより、関係者に口止めしたり、変えていないと嘘を言い続けたり、この期に及んで知らなかった、不祥事ではないなどと言っていたので、ちょっと始末が悪いと感じます。
この「混乱を避けるために隠した」という論法は、一般の企業の中でも見受けられることがあります。
正真正銘の不祥事や不正を隠すようなことは論外ですが、「どうせ言ってもわからない」「どうせ反発するだけだろう」「どうせ会社の立場は理解できないだろう」など、”どうせ・・・だろう“との捉え方の中で、“だからあえて説明しない”、“積極的には伝えない”という選択をしています。
隠そうと考える側は、「混乱させたくない」「不安を与えたくない」「反発を買いたくない」などと言いますが、だいたいにおいて、隠したことによって混乱し、不安を与え、反発を買います。
また、「この人、隠されたら怒るだろうな・・・」という経営者や管理者に限って、隠して公にしないということを考えがちなように思います。自分目線ばかりで、その行為が相手にとってどうなのかという視点を見失っています。
企業の中では、基本的には「隠す」ということより「どうやって伝えるか」を考えるべきです。当然個人によって理解の程度も違うでしょうし意見も違うでしょう。反発が表面化するかもしれません。だからといって隠したとしても、問題をあいまいに先送りしただけで、改善にも解決にもつながりません。一律に「隠す」ことでは、本来は理解できる人もその機会を失います。後から事実を知ったとして、初めから聞いていた場合と同じように理解を示せるかはわかりません。「隠されていた」という事実の、信頼関係に及ぼす悪影響というのは、意外に大きいものです。
個人的な、ちょっとした隠し事というのは、誰でもあるものだと思います。しかし、会社組織の中で「隠す」ということをする限り、ともにビジネスに取り組む仲間としての信頼関係は築けません。結局は業績が上がらない組織になるだけではないかと思います。
「隠す」のではなく、できるだけ混乱させないように、できるだけ不安を与えないように、できるだけ反発を買わないように、そういうことに配慮して、「どうやって伝えるか」が大事です。
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