田中 紳詞(経営コンサルタント/ITコンサルタント)- コラム「SAPのテンプレート導入について その3 ベンダ側のメリット・デメリット」 - 専門家プロファイル

田中 紳詞
業務システムからモバイルまで、IT業界の無差別格闘家

田中 紳詞

タナカ シンジ
( 東京都 / 経営コンサルタント/ITコンサルタント )
株式会社Exciter 代表取締役/主席コンサルタント
Q&A回答への評価:
4.6/23件
サービス:2件
Q&A:43件
コラム:49件
写真:0件
お気軽にお問い合わせください
03-6280-3255
※お電話の際は「"プロファイル"を見た」とお伝え下さい。
印刷画面へ
専門家への個別相談、仕事の依頼、見積の請求などは、こちらからお気軽にお問い合わせください。
問い合わせ
専門家への取材依頼、執筆や講演の依頼などは、こちらからお問い合わせください。
取材の依頼

SAPのテンプレート導入について その3 ベンダ側のメリット・デメリット

- good

SAP SAPのテンプレート導入について 2013-12-30 23:20

SAPテンプレートについて、第三回です。
最終回は、「テンプレートって、SAPベンダーにとってどうなの?」についてです。


ベンダにとってのメリット

まず、なんといっても商品ができることです。

というのも、ITベンダーというのは、大抵は独自の商品やサービスを展開しているものですが、SAP業界は「SAP社が開発・販売するSAPというパッケージありきで、その枠組みの中で導入コンサルティングや開発を行う」という点が少し特殊です。

つまり、SAPというパッケージありきなので、独自性が出しにくいのです。

もちろん、会計や人事などの業務領域や化成品メーカーや商社などの業種に特化して売り込んでいるSAPベンダーは多くあります。

しかし、それらは実績として示すことができても、形として存在していないが故に顧客への訴求力に欠けるため、テンプレートという自社商品を持っていることは大きなアドバンテージです。

次に、エンジニアの育成についてです。

SAPは、システムを動かすためのバックグラウンドの仕組みや裏方のコントロール(ベーシス領域)の設定作業や検証などが他のシステムよりも重みがあり、また追加開発に多額の費用を投じることが慣例であるため専用開発要員も多く確保されることが多く、担当するエンジニアが「お客様のフロント」や「業務ユーザ」と関わらないことは珍しくありません。

そういった層は「業務システムであるはずのSAPでメシを食いながら、業務を知らない」という事態に陥ってしまいがちになってしまいますが、テンプレートの構築は「具体的に、業務でいかに活用するか」に即しているため(でないと売れない!)、顧客のビジネスや業界を学ばざるを得ない状況に放り込まれるわけで、これは、エンジニアにとっては業務を学ぶ良い機会と言えます。
ただし、そのテンプレートの構築や活用を通してSAPというパッケージや業務への知見を深めることが肝要なのであって、テンプレート自体に詳しくなること、そこにばかり時間を費やすことは、必ずしもキャリアにとって良い面ばかりでないということは忘れてはなりません。

ベンダにとってのデメリット

まずはメリットで触れた点の裏返しなのですが、自社開発テンプレートのオタクになってしまう可能性があることです。

正直、そのテンプレートを使う現場と使わない現場のどちらかが多いかといえば、そのテンプレートがバカ売れしない限りは使わない現場の方が多く、「精通してもしょうがない」とまでは言いませんが、そこに時間を費やすなら王道の部分に邁進した方が、よほど市場価値は高まるでしょう

プロジェクトメンバにはSAPエンジニアとして成長してほしいのであって、テンプレートのスペシャリストになって欲しい訳ではないのです。

また、今となっては昔ほど導入プロジェクトが山程あるわけでもない、というのも大きな要因です。
逆に、ある程度SAPの知見を深めた後でないと、「SAP標準の動作」と「パラメータ設定を変更した結果としての動作」と「追加開発した結果としての動作」の切り分けが難しいため、他の導入プロジェクトや追加開発案件で混乱してしまうかもしれません。


最後になりますが、テンプレートには良い部分も悪い部分もあります。

もちろんコストでいえば、「欲しい機能の開発コスト」と「それらが大体揃っているテンプレート」の値段を比べた場合、殆どの場合はテンプレートの採用が有利となります。

ただ、それが先々のリスクや運用コストを棚上げした結果であったりもするわけで、また導入後にテンプレートだけ取り外すことができないという面もありますので、慎重にご検討頂ければと思います。

プロフィール評価・口コミ対応業務経歴・実績連絡先・アクセスサービスQ&Aコラム