田中 紳詞
タナカ シンジSAPのテンプレート導入について その1 テンプレートとは?
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SAPはもう終わりだ、なんて言われ始めてから早くも数年が経ちました。
しかし、全くそんなことはありません。
SAP社は成長を続けていますし、昔より数は減ったものの導入プロジェクトや改善案件などは、いまだに多くあります。
そんな中、大昔から存在し続けている「テンプレート」という存在について、触れたいと思います。
そもそも、テンプレートとは?
ざっくり言ってしまえば、テンプレートとはパラメータ設定(いわゆるカスタマイズ)と追加開発プログラム(いわゆるアドオン)の集合体です。
SAPの長所の一つに、システムの動作を制御可能なパラメータ設定の自由度が凄まじく高いことが挙げられます。
一般的なシステムでは「仕様です」「変更できません」としかならないシステムの仕様について、その振る舞いをコントロールできてしまう設定や変更可能箇所が非常に多いのです。
ただ、自由度が高いということには、設定箇所が多いことや、それに比例してテストに必要とする時間が膨らむこと、必要とされる専門知識や経験が多岐にわたるという側面があることも意味します。
そこで、「必要となるであろうパラメータ設定」を予め設定し、或いは動作を担保しておくことで、設定作業やテストに要する時間を減らし、導入プロジェクト自体の期間を短縮することでリスクと導入費用を低く抑えようというのがテンプレート採用のメリットの一つです。
もう一つ、追加開発プログラム(アドオン)については、これも同じようなものなのですが、例えば請求書や在庫レポートなど「大抵どこの導入企業でも作るもの」があります。
これらについて、「どうせ作ることはわかっているのだから、前もって作っておく」「作っておいたものを使ってね」ということで、テンプレートに予め組み込んでおき、各ユーザで使用するというものです。
もちろん、導入企業ごとに「自社のロゴを入れたい」だとか「全体をもう何ミリか寄せる」という調整は入るとして、ゼロから作ることと既に存在するものを調整することでは、開発に必要な期間は圧倒的に短く済みますし、大元の機能は既に品質が担保されているわけですから、テストに必要な検証作業も差分のみで済むのです。
なんでテンプレートを使うの?
採用する理由は、上記にあるように導入期間の短縮とコストの圧縮です。
コストはもちろんのこと、期間が長引けば長引くほどプロジェクトというものはリスクを増大させるわけですから、期間の短縮は非常に大きいのです。
また、SAPは様々な業種で採用できるシステムですが、乱暴な言い方をすれば、それでも軸足はメーカーの業務であり、その他の業種でも導入できるといっても、メーカーの業務をベースに拡張したに過ぎません。
また、「メーカーがベース」と言っても化学品メーカーなどのプロセス系と自動車メーカーなどの組立系があり、その中でも取り扱う製品によって法令も違えば管理要件も大きく異なります。
そういった背景の中、例えば商社や金融などの業種に向けたもの、特別な性質や管理要件を持つ製品に向けたもの、というようにパラメータ設定やアドオンをパッケージングして販売するというビジネスが生まれたのです。
まずは第一回目の概要ということで、次回はユーザにとっての採用メリット・デメリットについて触れたいと思います。
「SAP」のコラム
SAPのテンプレート導入について その3 ベンダ側のメリット・デメリット(2013/12/30 23:12)
SAPのテンプレート導入について その2 ユーザ側のメリット・デメリット(2013/12/29 15:12)