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8cmの竹串
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前回は異物誤飲の症状について書かせていただきましたが、今回は異物を実際飲み込んでしまったら(あるいは飲み込んだ可能性があったら)どうするか、ということについて書いてみましょう。
まずは病院へ電話。
当たり前ですが、ここで家族会議を実施し、「ちょっと様子を見ようか」とか、なじみのペットショップに電話して相談する、という選択肢を選ぶ飼い主様が意外と多いです。
まず主治医の先生の病院に電話して相談。
深夜などの時間外で電話に出てもらえない場合は、電話帳やネットで連れていくことができる範囲内に時間外でも対応してくれる病院を探し、なにはともあれ電話をして、指示を仰ぐ、というのが重要になります。
のどに手を突っ込んでもはきませんし、時々ネットに書かれている塩を大量に飲ませて、というのは非常に危険な行為ですので、けしてやらないようにしてください。
塩で嘔吐を促す量というのは、塩による中毒症状が発症する、結構ぎりぎりの量ですので、とても危ないです(なぜこれほどネットなどで書かれているのかちょっとわかりませんが)。
通常、すぐ病院に連れてきてくださいという話になると思うのですが(物によっては様子を見ましょうと言われるかもしれませんが)、その場合、できたら飲み込んだものと同じものを持っていく。
これはもちろん同じものがないとしょうがないのですが、例えば竹串を飲み込んだ、という場合は、齧った残りの部分と、齧る前の手つかずの長さを知りたいので、一緒に持ってきてもらいたいのです。
あるいはボタンなども、同じものがあれば、一緒にレントゲンを撮って、レントゲンに移る素材かどうかを確かめることができます。
タオルなどの布の一部を飲み込んだ場合は、残った部分を持ってきてもら、どれくらいの面積を飲み込んだのか、そしてそのタオルなどはほぐすと、どれくらいの太さの糸が出てくるのか、などを確かめたいのです。
結構この竹串(団子だったり、焼き鳥だったり)を飲み込む事故というのが、夜間救急診療では多いのですが、これがなかなか厄介。
飼い主様に「何cmくらいの竹串ですか?」と聞くと、不思議なことにみなさん
「8cmくらい?」と答えられます。
で、実際同じ竹串があったら持ってきてください、とお願いすると、だいたい12cmから15cmくらいの竹串が多いのです。
そもそも私たち獣医師のように、日ごろから「これは何cm」というようなことに気にかけて過ごしてない方も多いですし、おそらくできるだけ長くないほうが良い(便なりで出てくれると嬉しい)という希望が若干混じって「8cm」と答えられる方が多いのだと思います。
さらには、おそらくふたケタでないほうが良い、という心理から8cmという長さが口に出てくるのではないでしょうか。
10,000円!ではなく9,800円!!のほうが、なんだかお得な気がするのと同じ心理かもしれません。
とにかく、実際飲み込んだものの客観的な大きさ、材質などを知りたいので、ワンちゃんだけでなく、必ず飲み込んだものと同じものを持って病院へ行くようにしましょう。
ここから先は主治医の先生(あるいは救急病院の先生)の判断で、ということになります。
物によっては「催吐剤で吐かせてみよう」ということになったり、「レントゲンを撮ってみよう」ということになったり、「造影検査をしてみよう(バリウムなど)」ということになったり、あるいは「ちょっと様子を見てみましょう」ということになったり、その辺はその子の状態、飲み込んだものの大きさ、材質、形状にもよるので判断は意外と複雑です。
ただ、大事なのはその複雑な判断をおうちで(ご家族で)してしまわないことで、きちんと獣医師に相談したほうが良いと思います。
まずは電話で相談を。
ごくごく当たり前ですが、すごく大切な行動だと思います。