沖田 将人(獣医)- コラム「犬、猫のダイエット パート3(最終回)」 - 専門家プロファイル

沖田 将人
地域に密着したワンランク上のホームドクターを

沖田 将人

オキダ マサト
( 富山県 / 獣医 )
アレス動物医療センター センター長
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犬、猫のダイエット パート3(最終回)

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健康管理 ダイエット 2011-01-23 00:31

 今回は犬、猫のダイエットコラムのラスト。

 前回までの方法を全部実践したのに全然痩せない!!という場合のお話。

 最後の砦です。

 

Q.目標体重にあった量を決め、きっちり量も計り、おやつもやめたのになぜ痩せないか?

 

A. それは太りすぎているからです。

 

 は?と思われるかもしれませんが、たとえばベスト体重4kgの犬(または猫)がちょっと太って4.2kgになったとします。

 人間で言うと体重60kgの人が、63kgになりました、という感じですね。

 これっくらいのプチ肥満なら、よくペットショップなどに売っている、なんとかライトとか、なんとかフードダイエット用なんていう通常食を前回までの方法で与えていれば、大概数カ月でやせていきます。

 

 ところが、本来4kgの子が太って6kgになっちゃったとします。

 人間で言うと、本来60kgの人が90kgになっちゃった、という感じです。

 チョー肥満です。

 

 この場合、与えるべきフード量は前回までのお話だと、現在の体重6kgに合わせたフード量ではなく、本来の体重である4kgに必要な量(必要なカロリーの量)ということになります。

 たとえば体重6kgの子に必要なカロリーが一日500kcal、4kgの子に必要なカロリーは350kcalだとします(あくまで仮に、のお話です)。

 そうすると、本当は4kgなのに6kgになっちゃっている子というのは、4kgの体に2kgの脂肪が乗っかっているだけで、この脂肪に栄養を与える必要はないですから、350kcalのフードを与えればよいわけです。

 ではこの4kgの子に350kcalのフードを与えると痩せるかというと、おそらく痩せません。

 なぜなら、そのカロリーでは4kgの体重を維持できてしまうので、脂肪が燃焼しないからです。

 しかもここまで太っていると、活発な運動もできず、また活発な運動をすると膝などの関節を痛めてしまいます。

 

 ではどうすると脂肪が燃焼するか。

 それは4kgの体を維持できないカロリー、たとえば250kcalの食事を与えると、100kcal足りないわけですから、この分を脂肪を燃やしてくれるという形になります。

 つまり極論ですが、本来の体に必要なカロリーを下回るカロリーで、脂肪が燃焼し始めるということになります。

 

 ああ、じゃあフードの袋に書いてある4kgの量よりも少なめに与えれば良いのだね、と思われたら、それはブー!!

 不正解です。

 

 なぜか?

 それは通常のドッグフードは1日分に必要なカロリーをとると、一日に必要なビタミンだったりミネラルだったりを過不足なく取れるように設計してあるからです。

 

 つまり、脂肪こみとはいえ体重6kgになっちゃっている子(本来500kcal必要な子)に、250kcalのフードを与えれば、カロリー半分というだけでなく、ビタミンなどの栄養素も半分ということになってしまうわけです。

 それはダイエットではなく、単なる栄養失調です。

 

 中途半端に減らしても痩せない。

 痩せるほど減らすと栄養失調になる。

 ではどうするか?

 

 最後の手段…それは

 動物病院で減量用食事療法食を処方してもらうことです。

 

 …ここまで引っ張って、結局それ?と思われるかもしれませんが、最近の食事療法食は結構よくできています。

 どこのメーカーの何とここで挙げると、一社を贔屓してしまうのであえて銘柄はあげませんが、基本的には動物病院で売られている、医療用ダイエット食のコンセプトは根っこの部分は同じです。

 それは、「かなりカロリーを減らしても、一日に必要な栄養素はきちんと取れる」というところです(もう、かなり説明をはしょっているので、ここまで大雑把な話では本当はないんですが、理解しやすいように、とご理解ください)。

 もちろん、脂肪分がどうとか、たんぱく質がどうとか、カルニチンがどうしたとか、細かいことはいろいろあるんですよ。

 いろいろあるんですが、それ全部やってるともう毎月ダイエットのコラム書いてなきゃいけないんで、超ざっくりと

 「めっちゃカロリー減らしても、栄養失調にならないようにできてるんだ!!」というくらいに覚えておいてください。

 だから、腹もちがいいとか、グラム当たりのカロリーが少ないとかそういうことではなく、市販のダイエット目的の低カロリーフードとは全然意味合いが違うわけです。

 

 人間もそうですが、過剰な食事制限はダイエットではなく、栄養失調になっちゃうわけで、しかもリバウンドもやってきます。

 人間だったら、膝に負担をかけないように水泳や自転車からスタートなんて運動もありですが、犬猫の場合、これもまた難しい話。

 そうするとやっぱりカロリーメインで戦うしかないわけで、これを飼い主さんがアバウトにやると結構危険なわけです。

 

 前回までのダイエットコラム1,2を実践してもダメだった方は、ぜひ主治医の先生に相談してみてください。

 安全、確実、リバウンドなしのダイエットをきっと親身になって考えてくれます。

 ある程度ダイエットが軌道に乗れば、運動量も増えてきて、さらに痩せやすくなります。

 ベスト体重に戻れば、医療食から通常の食事にだって戻れます。

 いつまでも体重は減らないけど、満足もできないという中途半端な量をだらだらと続けるよりは、ずっとおうちの子たちに負担を与えずに短い期間でダイエットができるはずです。

 

 もし主治医の先生が指示したダイエット法を実施したのに、それでも痩せないなんて子がいたら?

 

 その時は家族の裏切り者を探しましょう。

 「○○ちゃんはそんなに太ってないわよねー」とか「そんな急にダイエットなんて、ストレスだ」とか「キャベツならちょっとくらいいいでしょ」とか言って、こっそり何かを与えている裏切り者が、あなたのすぐそばにいるのです。

 

 見つけ方はいたって簡単です。

 家族団欒で夕食をとっているときに、ワンちゃん(あるいは猫さん)を部屋に放してみてください。

 一目散に誰かの足元に行って、お座りしていませんか?

 数いる家族の中で、なぜかその人のそばにべったり張り付いて動かなければ、

 そう、犯人はその人です。

カテゴリ 「健康管理」のコラム

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