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映画のはなし(8) 全国大会に出たいです
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2月以降、良作が上映されています。その中で2作品をピックアップ。
「くちびるに歌を」は中学の合唱部を、「幕が上がる」は高校の演劇部を舞台にした作品です。
両者に共通しているキーワードは『行こうよ、全国!』
このコラムを読んでいる皆さんと同様、私も今までたくさんの岐路に立ってきました。
選択肢が3つあるとすれば「どの道を進もうか。どの道に進みたいのか。」を考えながら悩みながら1つを選びました。1つしか選べないので。
時には3つあった選択肢がいつのまにか1つしか残されていなかった、ということもありました。
今という場所から過去を振り返ってみると歩いてきた道は一本です。
同じ場所に立っていても前に進む時に見た景色と後ろを振り返ってみた景色の違いを感じています。
両作品を見ていると自分自身の中高生時代よりも現在の立ち位置、つまり指導する側からの目線で見ていました。
「幕が上がる」では演劇によって女子高校生たちがぐんぐん成長します。
仲間と深く関わったり、誰かに嫉妬したり、そんな自分が嫌になったり、いい先生に巡り合ったり、思わぬところから与えていただいた一言が胸に響くことだったり、家族の励ましだったり。
指導をする中で巡り合った生徒たちの中でこのような生徒がいました。
上級生が引退し吹奏楽部の部長になったが私と目を合わせて会話ができない、ついつい目を逸らしそわそわしてしまう中学2年生の生徒。
3年の6月になった頃から急に目を叛けることなく話せるように変わりました。
むしろ私のほうが押されてしまうほどの目力で。
きっと練習を重ねたことで演奏技術が向上したことや部長としての自覚が出てきたことが要因だったのでしょう。
「自信を持つ」とはこの姿のことだと教えられました。
「自信を持って演奏しよう。」そんな一言で自信を持てるというのは実は表面だけで、自信と言うのはそれまでに蓄積された「何か」を持った人の心の底から湧き上がってくるものだと教えられたのでした。
またこの映画、登場人物が成長するだけでなくキャストもどんどん成長していくのも見所です。
まるでドキュメントを見ているかのように。
「くちびるに歌を」はアンジェラ・アキの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を元に作られた映画です。
大人も悩みはあるけれど中学生にも悩みはあるし言えない悩みだってある。
その悩みによって時には自分自身をコントロールできないこともあります。
それは成長の途中であり、この年代のことを「疾風怒濤の季節」と言われることがあります。
そんな中学生たちが合唱によって仲間と結びつき、合唱部員の姿が過去のあるできごとによって心に傷をおった顧問の先生や家族をも変えていく、そんな素敵な作品です。
さてさて、15歳の自分が今の自分に宛てて手紙を書くとすればどんな手紙なんでしょう。
まだ音楽を、まだ打楽器を続けているだなんて夢にも思わないでしょうね。