吉野 真人(医師)- Q&A回答「頻拍発作や鉄欠乏などの可能性?24時間心電図も一度チェックを」 - 専門家プロファイル

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ほぼ毎日動悸がします。

心と体・医療健康 体の不調・各部の痛み 2017/08/17 14:09

44才女性です。
今年になってから動悸を感じる日が多く、ここ1ヶ月くらいはほぼ毎日です。
すぐ収まりはしますが繰り返し起こります。
また、睡眠中もふと目が覚めると心臓がドクドクと強く鼓動を打っていて息苦しさもあります。
毎年市町村で受けてる健診の心電図や、血圧測定は異常なしといわれてました。今年はまだ受診してはないのですが、心臓に何か問題があるのでしょうか?
家族に心臓が悪い人や高血圧の人はいません。

ご回答の程宜しくお願い致します。

みーみみーみさん ( 長野県 / 女性 / 44歳 )

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医師(精神科)

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頻拍発作や鉄欠乏などの可能性?24時間心電図も一度チェックを

2017/09/02 18:22
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動悸をもたらす病気や体調不良には様々なものがあり、心電図検査などによるチェックは必要です。健診に於ける心電図で異常なし、血圧も正常範囲だった事から、明らかな心臓疾患が存在する可能性は高くないという事は、少なくとも言えるかと思います。確率から言えば、心電図等の検査で「異常なし」というケースの方が圧倒的に多いのが実情です。

但し一般的な心電図では異常がなくとも、さらに精密な心電図検査を行なった結果、不整脈などの異常所見が判明したというケースも少なくありません。すなわち健診やドック、外来診療などで行なう心電図は、ほんの1~2分程度の所要時間で終了するため、その短い時間帯のうちに不整脈などの異常現象が現れるとは限らないのです。そのため少し長い時間をかけて不整脈などの出現を観察する必要性が生じます。
具体的には、ホルター心電図という24時間にわたりチェックする心電図検査があり、出没する不整脈などの異常を検出するのに威力を発揮します。これは一般の外来で受けることが可能で、携帯式の小さな心電計を装着し、一昼夜を普通に過ごした後、翌日に病院へ再度出向いて機器を返却します。数日で解析結果が出ますので、外来に結果説明を受けに行きます。

動悸をもたらす疾患には多数ありますが、頻度が高いものの一つに「上室性頻拍発作」があります。通常は正常な心拍ですが、突発的に頻拍(1分間に百数十拍)の状態となる不整脈です。つまり正常心拍と頻拍の状態が交互にやってくるのです。この場合、頻拍の時間帯には動悸などの症状が出やすいのですが、人によっては無症状という事もあります。
このような頻拍発作の診断に当たっては、通常の心電図検査では見落とされるケースが少なくありません。それは心電図検査を行なっている時間帯に、頻拍発作が起きているとは限らないためです。このような場合には上記のホルター心電図の出番です。この検査により、一日のうちで頻拍発作が現れている時間帯を把握し、その持続時間や症状、心電図の波形の関連性を解明することが出来ます。

さてそのような心電図を含む検査を受けたものの、結果的には「異常なし」という診断を受ける場合が大多数です。また仮に上記の上室性頻拍発作という診断が下されたとしても、それが動悸という症状に直接結びついているとは限りません。すなわち、特段の病気がないのに「動悸」という症状を自覚することは、意外なほど多いものです。それではどのような場合に動悸が現れやすいのでしょうか。

一つには「貧血」あるいは「鉄欠乏」の存在が挙げられます。貧血や鉄欠乏は、10代から50代までの女性に高頻度にみられる血液および栄養異常です。貧血や鉄の欠乏により全身各所に酸素をスムーズに運べなくなるため、倦怠感や息切れ、動悸、情緒不安定、肌荒れ、爪が割れやすい、など多彩な症状に見舞われます。貧血がないという方でも、精密検査すると鉄欠乏がかなり高頻度に認められます。
不足しやすいのは鉄だけではありません。男女を問わず、ビタミンB群の欠乏もたいへん目立ちます。ビタミンB群が全般的に欠乏すると、全身倦怠感、うつ症状、口内炎、音などへの過敏、不眠など多様な症状が現れやすくなります。ほかにも亜鉛やタンパク質なども不足しやすい栄養素で、これらの栄養素が単独ではなく複合的に不足するケースが大半です。

栄養という要素を一たん脇に置いて、よくあるパターンを例示すると、「更年期障害」あるいは「自律神経失調症」と診断される事例が少なくありません。この二つの疾患群は互いにオーバーラップしており、性別や世代によって診断名が異なってきますが、共通している要素として、ホルモンや自律神経の乱れが挙げられます。40代女性ですと、更年期障害の要素が多少なりともあるかも知れません。
自律神経の乱れで、なぜ動悸が発生するのでしょうか。それは心臓が主として自律神経の働きにより動いているからです。自律神経には交感神経と副交感神経という2つの系統がありますが、ごく単純化して説明すると、前者は活動時に働いて心臓を早く動かし、後者は休息時に働いて心臓を遅く動かす、という性質の違いがあります。この両系統の切り替えが上手くいかないと、動悸などの症状が発生しやすくなるのです。

以上を総合すると、先ずは上述のように心電図など心臓を中心とした検査を受け、不整脈など明らかな病気の有無をチェックします。もし治療を要する心疾患が見つかった場合には、担当医と相談して治療を受けるかどうか決める事になります。それに対し検査で異常がなかった場合には、前項に述べた栄養バランスや自律神経失調、更年期障害の要素がないかどうか、などの検討に入ります。
更年期障害などの要素がある場合、その治療法に関しては様々なものが勧められています。例えば「半夏厚朴湯」という漢方薬がありますが、これは動悸や喉のつっかえ感、胃から胸にこみあげてくるような症状に効果があるとされています。それからプラセンタ(胎盤エキス製剤)注射なども、かなり有効性が期待できます。特に更年期障害の方の場合、保険適応で注射を週2回まで受けられる可能性があります。

次に栄養バランスの調整の意味も含め、日常的に取り組みたい工夫に関して説明します。先ず食事に関してですが、鉄やビタミンB群、亜鉛、タンパク質などの栄養素を、毎日の食事から積極的に補給する事が望まれます。動悸の原因の一つに鉄などの栄養素が不足している場合が少なくないため、これら鉄を含む栄養素の日常的な補給は欠かせません。しっかりした栄養補給のみで動悸が軽減する可能性さえあるのです。
具体的な工夫に関しては、他のQ&Aや私のホームページ等で繰り返し詳述していますので、参考にして下さい。ごく簡単に説明すると、野菜や果物、海藻類、キノコ類、豆類などをたっぷり摂取し、肉や魚なども適度に食べる事が大切です。一方で米やパン、めん類などの炭水化物を控えめにし、お菓子や甘い飲み物など砂糖の多い食品を極力控えることが望まれます。一言でいうと「タンパク質たっぷりの糖質制限食」です。

次に「体を温める」事も重要です。自律神経の乱れが動悸を誘発する、と上述しましたが、自律神経のバランスを乱す張本人の一つが体の「冷え」です。体の冷えや低体温は動悸のような症状だけでなく、代謝の低下から太りやすくなったり、免疫力の低下から風邪をひきやすくなるほか、アレルギーやガンなどの誘因ともなります。日常的に体を温める習慣をつけておくと、病気の予防と伴に動悸の解消にもつながります。
具体的な保温の方法には様々ありますが、身近な工夫の一つに「お風呂」の活用があります。38~39℃という温めの湯に半身浴で、ゆったりと浸かる事がお勧めです。熱い湯に比べ、体の芯までしっかりと温まります。それから「運動」もお勧めです。体を温め代謝を活発にするほか、ストレスへの耐性も向上します。心臓を鍛える事にもなるため、心拍数の安定も期待できます。

蒲田よしのクリニック(内科)
吉野 真人
〒144-0052 東京都大田区蒲田5-27-10 蒲田TKビル1階
Tel : 03-6424-7071 FAX : 03-6424-7072
http://www.kamatayoshino-cl.jp/ (公式HP)
http://www.yoshino-radon.com/ (ガン専門HP)

評価・お礼

みーみみーみ さん

2017/09/10 17:39

この度は大変お忙しい中ご回答下さり有り難うございました。
貧血などでも動悸が起こるのは知りませんでした。以前健診で貧血を指摘されていたのですが、治療せずにいました。
まずは早急に内科、循環器科できちんと検査を受けようと思います。

また参考になるお薬も教えていただき有り難うございます。

今回は本当に有り難うございました。

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