向井 啓和(不動産業)- コラム「アメリカの財政出動について」 - 専門家プロファイル

向井 啓和
みなとアセットマネジメントの向井啓和 不動産投資のプロ

向井 啓和

ムカイ ヒロカズ
( 東京都 / 不動産業 )
みなとアセットマネジメント株式会社 
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アメリカの財政出動について

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不動産投資マクロ環境 2008-12-03 07:00
昨日付けのインターナショナルヘラルドトリビューンのオピニオンで財政出動に関してポールクルーグマン氏が寄稿してました。日本のバブル期の対応に関してもコメントしていますのでご参考まで。(簡単に飛ばして訳します。http://www.iht.com/articles/2008/12/01/opinion/edkrugman.php)

「現在アメリカ政府が景気を底入れさせるにはどの程度積極的に臨むべきかという集中した議論がある。私を含めた多くのエコノミストは景気が制御不能の下落を防ぐために非常に大きな財政出動を要請している。しかしながら、他のエコノミストは将来世代への負担の先送りとして大きな予算を心配している。

ただ、この考え方は全く間違っている。現在の景気状態において、短期で良いと言う政策と長期で良いと言われる政策の間ではトレードオフの関係はない。強い財政出動は現に経済の長期的な展望を良くしうるからだ。

赤字財政は長期的に景気を悪くするという主張は企業投資の借入を抑制するクラウディングアウト(*)の信仰に基づいている。- 政府が多くの借入をして、金利を上げて、民間企業が工場や設備投資に消極的になり、長期的な経済成長を減少させるという話である。これも通常は一理あるのだが。
ただ、現在は通常とはかけ離れた状況にあります。もしオバマ政権が財政に対してタカ派的な対応をして財政を緊縮化したら一体どうなるか考えてみてください。

低い金利につながるかもしれませんか?財政を切り詰める事で短期の金利は下がる事はありません、なぜなら多かれ少なかれFRB中央準備銀行に管理されているからです。アメリカ中央銀行はすでに可能な限り低い金利に既に押さえています。事実上のゼロ金利と言って良いでしょう。そしてその政策を経済のオーバーヒートの懸念が見られるまでは変える事はないでしょう。つまり、現実的には近い将来にはその可能性はないという事です。

緊縮財政は景気を一層下落させかねない ― 緊縮財政であると一層景気が落ち込むという予想が高まり、民間投資が減少するからである。この緊縮財政が民間投資を減少させるという議論は仮定上のお話ではなく、実際に歴史上に2度あった話です。

一つが1937年のフランクリンルーズベルトが積極財政を恐れる人たちのアドバイスを聞いて政府支出を急激に切り詰めて、増税をした際に起こりました。
その結果が厳しい景気後退で民間投資の急落です。

次の話はそれから60年後に日本で起こった事です。96年〜97年にかけて、日本政府は財政を均衡させようとして財政を切り詰め増税をしました。その結果民間投資の急速な下落を伴った景気後退に突入しました。

私が言いたいのは政府支出をを減らすのは常に間違っているという事ではありません。ビルクリントン政権時代の抑制された財政を思い出すとアメリカへの投資を呼び込み10年に渡る成長をもたらし、生産性の上昇に寄与しました。

ルーズベルトのアメリカと90年代の日本の状態を悪くしたのは緊縮財政ですが、どちらの場合も流動性の罠に掛りました。金融当局がどんなに金利を下げても金融政策が効かずに、景気は更に潜在力の遥か下で推移しました。

現在も同じ罠の中にいます。

追加ですが、積極財政は公共投資の形で行われれば大方将来のアメリカにとってはプラスになるでしょう。道を作り、橋を補修し、新しい技術を開発するなど全ての事がアメリカを長期的に裕福な状態に導きます。永続的に大きな政府を続けるべきかというと、それは勿論ノーです。ただ、多くの人が考えるほど公的機関の借入は長期的には悪い話ではないです。個人が収入と支出を合わせる必要があるのと同じ様な事です。

現在民間支出が基調的に下落しています。消費者は企業と同じように貯蓄の美徳を再発見していますし、過去の過剰支出と金融システムトラブルの混乱に足止めされて、投資を抑えています。このギャップはそのうち縮まるでしょうが、それまでは政府の支出でその穴埋めをすべきなのです。さもなくば、民間投資、景気全般は奈落の底に更に落ちる事になります。

結局、財政出動が将来世代の為に間違っているという考える人達は全く間違えているという事です。現在の勤労者世代と我々の子供たちにとって最良の方法は景気を回復の道に引き戻す事です。」

追記:一般には、クラウディングアウト効果として使われる。典型は失業対策などのため国債を発行して公共事業や減税、福祉政策の拡充などを行う場合、大量の新発国債が市中金利を高騰させ、結果として民間の経済活動(投資のための資金調達や住宅購入などの消費行動)に抑制的な影響を与えてしまう場合である。



アメリカはゼロ金利政策(ほぼ)と金融機関への資本注入と財政出動で公共投資、何でもしようとしています。日本でも将来の必要なインフラの構築の為の財政出動があっても良いのかもしれません。竹中元大臣が最近言及している羽田空港の拡張と国際化等は非常に有益な公共投資だと思います。余談ですが、アジアのハブへと発展する羽田空港が出来ると弊社のある品川駅近辺も大いに栄えるでしょう。品川駅が国内・国際交通の交通の起点になって行きます。
(東海道新幹線の起点駅であり、羽田へ一本で行ける立地です。)http://www.minato-am.com/
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