大澤 眞知子
オオサワ マチコグループ
親の仕事でカナダに転校する場合の問題点と注意点
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親の仕事でカナダやアメリカに転校。
現実を知らず、「いいなぁ〜」と思う人も多いかと思いますが、子供の学校環境にとっては相当の苦労が始まります。
可哀想なのは、迷える子供たち。
日本で同級生が、楽しい学校生活を送り、順調に進級し卒業し、進学していくのを横目で見ながら、行動範囲の狭い寂しい10代を送っている場合も多いことを知っておいて下さい。
特に、海外に社員を派遣する会社の人事担当の方にも、ぜひ知ってほしい現実です。
【質問】
中学2年生なのですが家の都合でカナダに
転校することになりました。 でも、私は英語が全くできなくて毎回テストで補習になってしまうぐらいできません。 不安でいっぱいです。 カナダに行くまでにどれぐらい英語が喋れたらいいのでしょうか。
【回答】
中2からカナダに転校。
留学とは全く別の問題点もありますね。
現地カナダからアドバイスです。
カナダで30年近くに渡り、日本から来る優秀な若者の支援をしている経験からお答えします。
また、現在、あなたのように親の駐在に同行し、高校に在籍している日本人の学習サポートも行っていますので、現地から実際に起こっていることを含めてのアドバイスです。
1.英語が喋れるかどうかはそれほど関係ありませんが、学校の英語テストが出来ないのは致命的です。
カナダで同じ年齢の中学生と同等レベルの授業に入れてもらうのに必要な能力は:
・英語基本文法を正確に理解していること(中1、2で習う英文法の完全理解は英語圏での勉強には必須です)
・その文法を運用する能力(自分の意見、また客観的な考えを正確な文法で表現することがカナダの授業です。そこに文法がめちゃくちゃな場合は、何も出来ません)
上記能力があれば、普段のコミュケーションは時間が経つにつれ楽になります。
ない場合は、周りとの関係をうまく築けないことになりますのでよく文法の基本を復習しておくことが必須です。
2.駐在先の学校で、まずはESL(外国人用の英語コース)に入れられます。 8年生(中2)には入れません。
辛うじて許可される授業は、体育とか料理とかのコースで、実際に10年生(高校1年生)に上がるのに必要な主要科目に入るにはかなりの年数が必要です。
もし、数学が得意(日本で評価4以上)ならばMathにはGrade8かもしくは7に入れてもらえる可能性はあります。
または、小規模の中学でESLのないところに行く場合は、学年を大きく下げてのスタートとなると思います。
例えば小学生のクラスからとか。
低い年齢のクラス、またはESLを早く抜け出るために絶対必要な能力は:
・1番で述べた文法
・英語のエッセイの書き方を知っていること(日本の作文方式では全く歯が立ちません)
・クリティカル・シンキングの基本練習をしていること(学校でも社会でもクリティカル・シンキングを中心に回っている所です。これが理解出来ないと、英語の挨拶すら困難です。)
これらが先生に認められるまで、正式な授業には入れません。
入ったとしてもパス出来ません。
3.カナダは州ごとに教育制度が異なりますので、どの州に行くかにより状況は少々変わりますが、9年生から10年生に上がるのは相当の挑戦です。
9年生の授業の成績と、州が行う試験の両方が加味され、10年生への進級が決まります。
進級出来ても、9年生までの成績により、大学に進む生徒用の高いレベルのコース、高校だけで終わる生徒のための低いレベルのコースに分けられます。
「大学向けコース」に在籍していない場合、日本の帰国生試験にも弊害となります。
4.あなたが中学生から高校生になるタイミングで帰国する場合は、マイナス要因は少し減ると思います。
進学先高校裁量で、カナダで取ったESLのコースも認められ、カナダの中学終了で、日本の高校進学という計らいが可能だと思います。
(進学校は無理ですが)
滞在期間が高校にまたがる場合は、「痛い」です。
例えば、やっとGrade10に上がるタイミングは、日本の同級生よりははるかに遅れると思いますので、日本の高校への途中編入は学年を遅らせてになる可能性が高いです。
親の駐在期間が過ぎ、その後もカナダに残り高校を卒業するにも大きな関門があります。
親のビザの扶養家族としての権利はなくなりますので、カナダの学生ビザを申請するようになります。
ビザ取得には問題はないと思いますが、そこから果たして何年かかったら卒業出来るのかは、楽観できません。
日本にいれば、この先中3と高校3年間で、めでたく高校までの教育は終了しますが、カナダに来た場合、今から4年で日本の同級生と同時期の卒業はまず不可能です。
プラス2〜3年は計画しておく必要があります。(上記1番、2番の能力がない場合)
In short, 1)日本で習っている英語をほぼ確実に理解していること 2)英語のエッセイの書き方を知っていること 3)クリティカル・シンキングとは何かを理解していること。 これさえあれば、上に述べた問題点は限りなく小さくなりますので、カナダに来る前に十分準備をすることをしっかり認識しておいて下さい。
Good luck!
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