大塚 嘉一
オオツカ ヨシカズ真空管アンプ
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我が家の小動物たちが、奇声を発して部屋を突進することは、もはやあるまいと思われる今日この頃、突然思い出したように、奥にしまってあった真空管アンプを引っ張り出してきました。
タマ(球。真空管のこと)は、泣く子も黙る、本家ウエスタン・エレクトリック(WE)の300B(復刻版だけどね)。真空管の王道を行く音が聴けます。出力は、片側高々8ワット。カラヤンの振るオーケストラなんて聴かないので、これで十分、おつりがくるくらい。
鳴らすスピーカーは、これまたひと昔、ふた昔前の、タンノイのスターリング。本体と台が分かれているやつ。見かけはフルレンジなのに、2ウェイで、ツイーターがホーンなんだよね。弦の再生に秀でているのは、定評どおり。
たまたま、近くにあったCD、アルバンベルクのドヴォルザーク弦楽四重奏曲「アメリカ」をかけてみる。スピーカーから音が出た瞬間、これだね。
以前は、三菱ダイヤトーンの3ウェイのスピーカーを、デンオンのトランジスタアンプで聴いていた。それだと、解像度の高い音が聴けるのだが、音楽の楽しさと言う点では不満が残る。もっとも、そう思うようになったのは、タンノイを真空管で鳴らすようになってからだけどね。
真空管アンプは、トランジスタなどのソリッドステートアンプと確かに音が違う。いい音がする。私の場合、真空管アンプは、回路図を見れば、音の信号が増幅される理屈が分かる(現代のソリッドステートアンプは、ブラックボックスで理解困難)、電子が、真空中を飛び交っている絵が浮かぶ(ソリッドステートは、電子がごつごつと障害物にぶつかっている、あるいは電子が飛び石のような穴を飛び跳ねるように移動しているよう)などが理由だが、イメージ的なものが大きいと言われれば、否定はしない。
中学生のときに、6BQ5の真空管アンプと16センチのフルレンジスピーカーのボックスを自作していた、数学大好き理系少年が、大学を受験するときは、いずれも法学部、と文転(理系から文系に変わること)したのは何故か。思い出そうとしても、よく思い出せない。高校三年間で何があったのか。
タンノイの横腹に、クレヨンで描かれたアルタミラ洞窟の壁画は、人類の歴史ならぬ、個人史を想う旅へと、私を誘(いざな)うのでありました。
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