大塚 嘉一
オオツカ ヨシカズ息子への訓示 国語編
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〇〇よ。
物事の分け方にはな、正しいか間違ってるか、とか、得か損か、とか、良いか悪いか、とかの他に、美しいか醜いか、とか、綺麗か汚いか、という分け方があるんだ。判断基準ていうんだけどな。
人生の八割、九割は、正しいかどうか、っていう、そっちのグループの判断基準で決まっていくんだ。例えば、テストだ。答えが、正しいか間違っているかで点数がついて、順位や偏差値で評価されちゃうわけだ。普通の人は、大方のことは、得か損かで決めてる。
だけど、人生の一割、二割は、美しいかどうかで決まることがある。かえって、そっちのほうが、人生に重大な影響を与えたりもする。
オマエだって、可愛い子が好きだろう?
昔、アップルを立ち上げたスティーブ・ジョッブスは、美しいかどうかに敏感な人だった。コンピューターがはやり始めのころ、多くの人は、アルファベットは、読めればいいと考えていた。しかし、ジョッブスは、アルファベットは美しくなければならない、と信じていた。そのようにして作られたアップルのコンピューターは、少し高かったけど、大人気さ。
今から2400年くらい前のこと、それまでも、美しいかそうでないかを気にする人はいたんだが、美しい生き方というものがあると言い出した人が現れた。昔のアテネ、ポリスという小国家みたいなとこに住んでいた、ソクラテスという人だ。ソクラテスは、若者をたぶらかしたという理由で、陪審裁判で死刑を言い渡された。どうも冤罪っぽいんだが、友人たちから、逃げるように説得されても、聞き容れないで、ポリスの決まりには従う、って言って、毒ニンジンを飲んで死んじゃうんだ。それが、彼にとっては、かっこいい、美しい生き方だったんだろうなあ。あとに残された人は、なんでソクラテスは死んじゃったんだろう、って、ずっと議論してるんだ。プラトンて人は、それを考え続けて、自分の哲学を作っちゃった。プラトン哲学は、その後、世界中に大きな影響を与えたんだ。今あるこの世界も、もしソクラテスがいなかったら、違ったものになっていたはずだ。
なっ。だから、漢字は綺麗に書けよ。
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