大塚 嘉一
オオツカ ヨシカズウエストコーストとポルシェ・356スピードスターの思い出
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ポルシェにはあまり乗ったことがないのですが、その昔に一度だけ、356スピードスターで、真夏のウエストコーストをドライブしたことがあります。
弁護士業務の合間を縫うようにして飛んだアメリカ、初めての右側通行では、右折左折の折にも、どのレーンに進めばよいのか右往左往する始末です。それでも運転に慣れてくると、その軽快感こそが、ポルシェの原点ともいうべきこの車の真骨頂だと実感できたのでした。バスタブとも称されるその丸みを帯びた愛らしいボディー、その銀色の上に並ぶ二人の髪を乱しながら、乾燥した空気がさわやかな風となって吹き抜けていきます。
ポルシェのあふれかえる西海岸でも、私と同い年くらいの、このスピードスターは珍しいらしく、サービスエリアに駐車すると、車好きが寄ってきます。「これ、本物かい?」、「もちろんさ!」と、まるでオーナーであるかのように自慢するのでした。スピードスターのレプリカがたくさん作られています。
それにしても、昨日まで見も知りもしなかった青年に、大切なクラシックカーのキーをポンと預けてしまうオーナーの懐の深さには感動しました。あのときのオーナーの年齢に差し掛かろうかとする今の私ですが、そんな度胸があるかどうか。
小旅行を終え、オーナーに鍵を返したときの安堵感は、私に預けられたもう一つ別の大切なもの、一番大事なものを無事に返すことができたがため、ばかりではなかったと思うのです。
カルフォルニアで飲むコーラの味は格別という発見とともに、私の忘れえぬ思い出となりました。
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