大塚 嘉一
オオツカ ヨシカズ防水保障のないロレックス
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私の愛用の腕時計は、ロレックスのオイスター・パペチュアル・デイト。今は、ロレックスと言いならわされているようなので、そう言ったものの、昔はローレックスと、伸ばして言っていたと思うのですが。原音に忠実に、というのが最近の考えなのでしょうか。
ロレックスは、完全防水、自動巻き、日付が瞬時に変わることなど、(当時としては)画期的な機能が、シンプルな美しいボディに溶け合っているのが、素晴らしい。特にデイトは、華美に走らず実用本位で、質実剛健を絵に描いたような製品。私のは、現行のモデルより、やや小ぶりです。デイトなのに、デイトジャストのように、24時ぴったりに日付が変わるので、過渡期のモデルなのでしょうか。
私の時計が、ショーケースを飛び出してから42+α(アルファ)年が過ぎています。42というのは、私が高校に入学した時から、今までの年数。高校生になった春に、父から貰いました。買ってもらったのではなく、それまで父が使っていたものを譲り受けたのです。父が、どれほどの期間、使っていたかは聞いていないので、α(アルファ)。
もう、ほとんど体の一部となっています。
修習生のときには、経済的にピンチに陥った私を、身を挺して救ってくれたこともありました。私が、借りたお金をもって帰ってくるまで、質屋の蔵の中でじっと待っていてくれたのです。
弁護士になってからは、もっと高価な時計にも、もっとお洒落な時計にも、手を出したことがあります。しかし、いつの間にか、この時計に戻ってきます。
少し、遅れ気味かなと思うころが、オーバーホールの時期。
今回は、突然、ストップしてしまったので、日本ロレックスに持ち込みました。以前は、東京駅の東口にあったのですが、西口にあらたにショップが開設されています。移転したのは10年くらい前とのこと。修理・オーバーホールでも、ちゃんと利益を確保させていただきます、という強い意志が表わされた豪華な店構えです。
見積もりができて、びっくり。通常のオーバーホールの数倍の代金です。永年の間に積もった疲労が原因でしょうか。交換する部品も、かなりあります。
問題が発覚しました。ボディの腐食が見つかり、防水機能に、障害が生じるかもしれないというのです。対策として、交換部品があるのですが、もう一個、素敵な時計が買えそうなくらいの金額です。なにより、その部品には、番号が打刻してあって、代えると、番号が変わってしまうというのです。ムーブメントが同じとはいえ、それだと、時計のアイデンティティーが失われてしまうような感じがします。
悩んだ末、対策のための部品は交換せずに、そのままにして、作業をしてもらいました。やってみると、今回は、防水機能に問題はないとのこと。防水機能のないロレックスなんて、水漏れのするゴム長靴のようなものです。
やきもきさせたうえ、私の手に戻ってきたそれは、私の腕で、以前にも増して、輝きを放っています。その光の燃料は、きっと、お金では買えない、何か。
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