大塚 嘉一
オオツカ ヨシカズマセラティは洗濯女か貴婦人か
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マセラティ・クーペに、10年くらい前まで、5年ほど乗っていました。
当時、自宅と事務所の往復に加え、秩父の行政法律相談と、さいたま地裁秩父支部の訴訟事件を抱えていたので、月々の走行距離は、かなりなものになりました。プライベートに、弁護士業務にと、酷使していました。ディーラーであるコーンズの担当者Yさんに、「僕が、日本で一番マセラティに乗っているんじゃないかな」と投げかけたところ、一瞬間をおいて、「いや、どこそこの誰それさんが、もうちょっと距離を伸ばしています」との回答が返ってきました。銀メダル、でしょうか。
毎日乗っていて、重篤な故障はありませんでした。長い渋滞にも文句一つ言わず、直後に高速に乗れば何処までも右足の動きに瞬時に追随してくれます。高性能エンジンを載せながら、十分実用に耐える車です。
他方、一人きりになる時間を確保する場所として、これ以上のものはありませんでした。魅力的なデザイン。内部に入れば、適度にタイトな空間。赤いポルトローナ・フラウの椅子に身を委ねていると、ささくれ立った精神が癒されていくのが分かりました。ダッシュボードの中央には、ちょっと贅沢して誂えたオプションの金時計が光っています。マセラティ好きの方なら先刻ご承知のアイコンです。それらが、私に媚びることなく、私を包んでくれます。そして、私を甘やかすだけではなく、ある種の緊張感を強いるのです。官能的というのとも違う。もっと、高貴な感じ、でしょうか。
親会社のフェラーリ社も、マセラティには、フェラーリとは一線を画した魅力を保持しようと努めているようです。
マセラティは、私の中では、ある女優のイメージと重なり合います。ある時は、生活力旺盛で逞しい洗濯女、そしてある時は、周囲をひれ伏さずにはおかない貴婦人。その人の名は、ソフィア・ローレン。
歳がばれましたか。
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