田尻 健二
タジリ ケンジ現代型うつのメカニズム(私説)-自己愛講座6
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最近、従来のうつ病と区別する形で「現代型うつ」という言葉がよく聞かれるようになりました。この名称は正式な診断名ではありませんが、多くの専門家が「自己愛の病理」と推測していて、私もこの考えに賛成です。
今回はこの事に関して総論的な内容を書かせていただきます。
あくまで私見ですが、現代型うつは次のような理由によって生じると考えられます。
自己愛的な性格の人は自尊心を支えるために、躁的防衛と呼ばれる、他人からの承認や賞賛を執拗に求めたり、あるいは万能的な自分の姿を盛んに空想することに頼る傾向があります。
ところが社会で生活していれば、いつも他人からの承認や賞賛を得られるとは限らず、また万能的な自分の姿を盛んに空想したところで、精神病水準のような重症の人でもない限り、それが単なる空想に過ぎないことに気づいてしまいます。
ですから自己愛的な性格の人は、よほど重症の人でもない限りは、他人から自分の期待する承認や賞賛を得られないと、かなりの確率で気分が落ち込む、つまり抑うつ状態に陥ることになります。
そしてこの場合でも自己愛的な性格の人は多くの場合、その辛い状態に耐えるよりも、手っ取り早く上述の躁的防衛によって気分を高揚させることを選択しがちなために、いつまで経っても辛い精神状態に耐える力が育っていきません。
さらに上述のように社会の制約や、あるいは空想は現実とは異なるとの理由から躁的防衛による気分の高揚は長続きしないため、このようなことを延々と繰り返しているうちに、だんだんと疲れてきます。
そうして万能的な空想に必要な精神的エネルギーが尽き果て、抑うつ状態から抜け出せなくなった状態が「現代型うつ」の鬱状態なのではないかと考えられます。
しかし万能的な空想は無理となっても、外からその人の自尊心を高めるような出来事がもたらされれば途端に自尊心は回復します。
ですからこのことが典型的な鬱病の人と違って、現代型うつの人がすぐに元気になる理由ではないかと考えられます。
しかし残念ながら、その元気な状態も長続きしないのですが…
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