ガーデナー建築家/勝田無一(建築家)- コラム「シリーズ「住宅と庭」の話 (第1部)(その5)」 - 専門家プロファイル

ガーデナー建築家/勝田無一
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ガーデナーケンチクカカツタムイチ
( 東京都 / 建築家 )
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シリーズ「住宅と庭」の話 (第1部)(その5)

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シリーズ「住宅と庭」の話 (第1部) 2010-10-17 18:00

【「塀の家」と「フェンスの家」】

「塀の家」と「フェンスの家」の写真です。どちらもかなりの豪邸です。
フェンスの家はアメリカの住宅です。広い敷地を自慢するがごとく道路から見透すことが出来ます。


一方、塀で敷地を囲まれた家は、日本の高級住宅街・・「中はどうなっているんだろう」・・思わず覗きたくなります。
塀の風抜き穴から中の庭が覗けたりすると・・何か人の秘密を見てしまったような・・罪悪感さえ覚えます。


この違いは何なんでしょう?民族的生活文化の違いなのでしょうか・・・


私的所有の概念が明確な欧米でさえ、敷地の境界を示すフェンスは住宅の装飾的な意味合いしか持たないのに、
日本では何故このような塀が生まれたのだろうか。


これにはいくつかの理由が考えられます。欧米では個人と社会が対峙しており、家の玄関ドアーを一歩出るとそこは
「社会」・「街」なのです。


「家」と云うより靴を脱ぐプライベートルームである「個室の部屋」が個人としての最小単位なのかもしれません。
外壁で囲まれた家の構造そのものが社会と個人を隔離していると思います。


日本の場合は、敷地を含めた塀の内側である「家」エリアが社会に対する単位だと思います。


ホテルと旅館の違いもそんなところでしょう。ホテルではベットルームである個室の鍵を掛け、一歩廊下へ出るとそこはパブリックであり、
街の街路と同じ感覚です。 日本旅館のように浴衣一枚でフラフラ廊下を歩くのは、大変なマナー違反であり異常者となります。


ホテルの廊下と対照的に、日本旅館ではタオル一枚肩に掛け、風呂場から宴会場・・・さらに旅館の庭散策まで、「塀」の内側は
浴衣一枚で自由に歩き廻れます。私服姿でいると、くつろいでいないようでむしろ違和感があります。


欧米感覚の個人を前提とした「社会」。日本人の「家」を前提とした「世間」。この似て非なる文化の構造は、そのまま「フェンス」と「塀」の違いに
現れているのではないでしょうか。

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