堀江 健一
ホリエ ケンイチグループ
視覚探偵日暮旅人3 人はなぜ謝らないのか?嘘をつくのか?
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前回、強面の男性が女性に好かれようとして、苦労する話をしました。
強面だからこそなのだと思いますが、ふとした瞬間にニコッと笑うだけで可愛く見えたりして、それだけでギャップです。
そんな自然なギャップだけで充分魅力的で良いんじゃないのかなぁと思ったりするのですが、あえてもっと自分のキャラを「モテるように」作ろうと演じてしまおうとして、不自然になってしまうパターンがあるというお話しをしてみました。
さてここでまたドラマの話に戻ります。
旅人には血のつながらない幼稚園児の女の子と、探偵事務所兼住居で浜田岳さんと一緒に生活しています。
その女の子の幼稚園の保母さん(多部未華子さん)は、度々園のお迎えに来る旅人と関わり、彼に恋愛感情を持ちます。
その想いは回を重ねるごとに強まって行くのですが、旅人もまた彼女に特別な感情を持つようになって行きます。
旅人は自分の能力である、人の感情を映像で診る事のできる視覚を使って、彼女が自分を好きであることがわかりますが、彼には彼女の好意を受け入れ、抱きしめてあげる事が出来ません。
なぜなら、自分は「どす黒い恨みの念を持っている復讐鬼」であり、彼女をその復讐に巻き込めないし、そんな自分は彼女から愛される資格がないと思っているからです。
旅人は、鏡を通すことで、自分からどんな感情がにじみ出しているのかも見る事が出来るようです。
ですから旅人は多部未華子さんの好意に気が付かないふりをしたり、自分は彼女に好意なんか感じていないふりをして、多部未華子さんを返って傷付けてしまいます。
旅人は「彼女が好き」と言う自分の気持ちに嘘を付いてしまうのです。
そんな切ない二人の関係がどうなっていくのかも、このドラマの見どころの一つです。
おじさんは、「あーもう復讐なんて止めて、未華子ちゃんと娘さんと3人で幸せに暮らしなよ~」なんて思っちゃいます。
自分を省みた時に、自分から、自分でも嫌になる様な、悪い感情がにじみ出ているのを見てしまったら、さぞ自己嫌悪になることでしょう。
大抵の人は、そんな自分の醜い姿を見たくは無いと思うものです。
自分の醜い姿を見たく無い、認めたくないから見ないふりをする。
自分に嘘を付く。
でも自分で自分にもそんな部分があるのだと認識しないと、「自分の良くない所は見ようとしないで、人の悪い所ばかり責める」様な人になってしまいかねません。
自分が悪いことをしたのに、謝らない人、謝れない人がたまにいます。
そんな風に、自分の非も認めてあげないと、人からも認めてもらえる事は出来ないものでしょう。
罪悪感が強すぎると、
自分の悪い所ばかり見てしまい、
あまりに自己嫌悪になってしまうと、
「人に謝る事さえ申し訳ない。自分は人から受け入れてもらえたり、謝る事さえ許されない様な酷い人間なのだ」
と思い詰めてしまわれている人もおられるようです。
実際に以前職場で私がミスをしてしまった時に、申し訳なさ過ぎて、なかなか素直に謝れないと言う心情が生じてしまったことがありました。
自分が悪かったら、別にいつでも素直に謝れると言う人には理解してもらえない心情かも知れませんね。
そんな時、師匠である先生から
「謝ってしまった方が、自分が楽になるよ。
自分が楽になる為にも謝ってしまった方が良いよ」
と言ってもらえて、「自分が楽になる為に謝っても良いのだ」と言う考えもあるのだと知って、非常に気持ちが救われたことがありました。
子供はよく、自分が悪いことをしたなぁと思っているのに、それを誤魔化してとんでもない嘘をつく事があります。
以前見たなにかの子供観察系の番組で、お母さんがお使いに出ている間、幼いお兄ちゃんと妹の二人に御留守番させて、テーブルに用意しておいたケーキを食べずに我慢していられるかを見守ると言う内容を観た事があります。
しばらくの間は、二人とも我慢してお母さんの帰りを待ちますが、
案の定お兄ちゃんは「ちっとだけ」と言いながら、一口ケーキを食べてしまうと、
もう我慢できずに半分くらいまで食べてしまいます。
お母さんが帰って来て「あれケーキ無くなってる。お兄ちゃん食べたの?」と聞くと
お兄ちゃんは首をプルプルと振りながら「僕、食べてない」と答えます。
「じゃなんでケーキ半分無くなってるの?」と問い詰めると
「なんか宇宙人が出て来て、食べちゃった」と途方も無いことを言いだして、スタジオのゲストのみんなが、その苦肉の嘘が可愛いのとお兄ちゃんが困っている様子を見て暖かい笑いが起きていました。
最後は泣きだして、「僕、食べちゃったぁ。ごめんなさい」と謝ります。
こんな他愛も無い嘘なら罪もありませんね。
でもどうして嘘まで付いてお兄ちゃんは謝らなかったのでしょう?
単純に怒られるからでしょうね。
テレビのお母さんは、ケーキを食べちゃったことも、嘘を付いて誤魔化そうとした事も笑って許してあげていました。
しかし、もしこの様な出来事が起きた時に、お母さんが笑って許してくれる家庭では無かったとしたらどうなってしまうでしょう?
謝っているのにいつまでも怒られてしまったり、
何度も叩かれたり、
押し入れに何時間も閉じ込められてしまい、
それが躾だとしたら、確かに2度と親の言いつけを破る事は無くなるかも知れません。
しかし、テーブルにケーキを出しっぱなしにしておいて、子供に食べちゃいけませんと言い付ける方が酷な話です。
子供なら当然抱く欲求を、我慢できなかったからと言って責め立て、許されなかったら、
子供は自然な欲求を抱いてはいけないのだと学んでしまう事にはならないでしょうか?
食べたくなるのが子供として当然なのに、食べたい欲求を感じてはいけないと、自分で自分の欲求を禁止してしまう事になるでしょう。
躾は大切ですが、
親が厳しすぎたり偏った道徳観念があったりして、子供なら当然感じる欲求にまで禁止令を出してしまっていたら?
怒る基準も適当で、親の気分で気まぐれに怒られたりしたら、子供は「何をして良いのか?」「何をしたらいけないのか?」が学べません。
もはや何をしても怒られるような気がして、親の顔色を常に伺ってビクビクしながら自分の身を守る事としか出来ません。
親の言う事を聞く子ほど、自分の欲求を感じない子になってしまう傾向があります。
自分が何をしたいか?
ではなく
何をしたら親に怒られないで済むか?
だけを考えて生きるようになってしまいます。
そして、それでももし欲求に耐えられずにケーキを食べてしまったとしたら、嘘を付くしか無くなります。
そして絶対にその嘘を嘘と認めるわけには行きません。
謝っても許してもらえないのですから。
「自分が悪かった」と認め、謝るわけにも行かなくなります。
謝っても許してもらえないのですから。
よくヤフー知恵袋などのネット相談の中でもよく見かけられるのが
「よく嘘を付いてしまいます。
別に嘘を付く必要など無い事に関してまで嘘を付いてしまいます。
そんな自分が大嫌いです。
どうすれば嘘をつかないようになれますか?」
と言うような質問が寄せられています。
虚言癖と言う診断名があるくらいですから、稀な症状ではないようです。
きっと無意識レベルで、「ありのままの本当の事を言ったら怒られる。しかも許してもらえない」と言う様な恐怖感があって、別に怒られる様な事でもない事にまで嘘を付いてしまうクセが付いてしまったのかも知れません。
もし自分が悪いことをしてしまったとしても、それを自分で認めて、謝れば許してもらえる。
そんな当たり前の事こそ、親は子供に教えてあげる必要がある気がします。
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