堀江 健一
ホリエ ケンイチグループ
夫が常識では理解できない!被害妄想・過剰防衛・カサンドラ症候群
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アスペルガーの方(以下AS)にとって、そしてアスペルガーの方(パートナー)と結婚された方にとって夫婦生活に支障が出る事の一つは、アスペルガーの方に
「頑固さ」
があることのように思います。
これはアスペルガーと関係なく、一般的にも言えることであろうとは思います。
そのようなASの方と、そのパートナーさんに向けて、少しでも2人が円満になれることを願ってコラムを書いています。
どのような頑固さかと言うと、
自分は間違っていない
自分が正しい
何でも出来る自分でありたい
との強い想いがあるようです。
そのため「人の言うことに耳を傾けない傾向」が生じます。
その想いが強いと、パートナーが自分に対してお願いや、アドバイスをしたとしても、
それが自分に対する批判や攻撃に聞こえてしまうようなのです。
「こうしてくれないかな」「こうした方が良いよ」と言っても、
「なんでこうしないのよ!」と攻められているように感じてしまうというのは前回も書いてみました。
攻められたら、反撃する。
被害妄想と過剰防衛と言えるでしょう。
パートナーとしては「これをして」とお願いしているだけなのに、
「なんで私がやらなきゃいけないんだ!」とかキレられることになるので、段々コミュニケーションを取るのも恐ろしくなり、
「怒らせないように」すごく気を使うようになるのですが、気を使うあまり余計言葉使いがあいまいな言い回しになってしまい、曖昧な言い回しが理解できないASの方の地雷を踏んでしまうこととなります。
どこに地雷があるかわからないのでパートナーはビクビクして、ますます神経が消耗していきます。
前回でASの人の特徴の一つとして挙げた「特定の言葉に対して急に怒り出す」と言うのは、その地雷のことを指します。
地雷はASの人によってそれぞれなのですが、例えば
「もっと人に頼っても良いのよ」とパートナーが言ったとします。
普通に受け取れば親切で、「なんでもして欲しいことや困ったことがあったら、素直に言ってね」という意味合いかと思います。
ところが、ASのある種の人にとってはその「頼る」と言う言葉が
「あなたは人に頼らなければ、何も出来ない人だから」
と言われたように感じる言葉で、
文章にその「頼る」という言葉が入っていただけで
「私は別にそんな弱い立場の人間じゃない!下に見ないで!」とか
「自分では私なりにがんばっているのに、それを否定するのか!」
という批判的な言葉に自動変換されて即座に迎撃体制に入って怒り出してしまうのです。
前後の文脈を読み取って、相手の真意を測ることが出来ないのです。
こうしたことも、一般的な常識内で会話しているパートナーからすれば、まったく理解を超えたことでしょう。
誰でもではありませんが、そうした傾向が強い人がいるのです。
ただし、最初からすぐに怒り出さすわけではなくて
「その言葉(例えば、頼ると言う言葉)は嫌いだ。使わないでくれ」
と言ってくれる場合もあります。
そのような場合、「私が言った意味は、そんな批判的な意味はまったくない。こう言う意味で使ったのよ」とパートナーの気持ちを丁寧に根気良く説明することは大切です。
ただ、大抵の場合、なんで怒りだしているのかもわからないので、何を根気よく説明する必要があるかもわからないままである事の方が多いようです。
ただ、一度その言葉が批判的な意味合いであると頭にインプットされてしまうと、なかなか違う良い意味で使われたのだと上書きをして保存することが出来ないようです。
ですから、理屈では理解しにくいと思いますが、ASの人が「使わないでくれ」と言った言葉は、もう理屈抜きに使わないようにした方がお互いのために良いでしょう。
また、何が地雷原なのか尋ねてみるのも良いでしょう。
つい相手が怒り出すと、パートナーもすぐに謝ってしまうだけだったり、パートナーのほうも怒り出してしまうことが多いかと思いますが、冷静に機械的に「私の言い方の、どこがそんなに怒る理由になったの?」と聞くと、案外何が地雷だったのか判明するかもしれません。
「そんな意味で言ったんじゃないのに、なんで私の愛情に対して、そんな反応で怒るのよ!私のこともわかってよ!信じてよ!」と、パートナーも怒りを覚えたり、悲しく思ったりすることと思いますが、その心情を訴えてもそれは徒労に終わることの方が多く、パートナーは無駄に傷付いてしまうことになります。
パートナーが親愛の情を込めて「あなたってほんとおバカさんね」と微笑みながら言ったとしましょう。
でもそう言われたASの方は、「人にバカ呼ばわりされた」「ふざけるな!」「バカにされて悲しい」と感じてしまったりするのと原理は同じです。
「バカ」と言う言葉は、どんなに愛情を込めて言われたとしても、ASの人にとっては、人をさげすむ言葉としか認識されないのです。
そのようなわけで反撃してしまったASの方も、傷付き、辛いのも事実なのです。
なにも悪意を持って攻撃してやろうと思ってパートナーの言葉尻を捕らえて因縁をつけているわけではないのです。
お互い被害者同士のいがみ合い。
どこにも勝者のいない、不毛な戦争です。
このようなパートナーの方が、傷付き、やがて精神的な問題を抱えるようになってしまう状態は
「カサンドラ症候群」
と呼ばれています。
起こりうる精神的または身体的症状として
低い自己尊重
混乱/当惑した感情
怒り、抑うつ、不安の感情
罪悪感
自己喪失
恐怖症(社会恐怖症、広場恐怖症)
心的外傷後ストレス反応
疲労
不眠症
偏頭痛
体重の増減
PMT;月経前緊張症(婦人科系の問題)
うつの症状や、酷いモラハラ夫の場合ととても重なる、精神的な負担から来る症状です。
カサンドラとは、「人々から決して信じてもらえない予言者」のことで、ギリシャ神話に登場する、トロイの王女です。
アポロンは彼女に予言の能力を授けましたが、アポロンの愛が冷めて自分を捨て去っていく未来が見えたカサンドラは、アポロンの愛を拒絶するようになります。
するとアポロンは「カサンドラの予言を誰も信じない」という呪いをかけてしまいます。カサンドラには予言の能力は残されましたが、未来の出来事を変えることも、予言の正しさを他の人たちにわかってもらうこともできなくなったのです。
これは
ASの人に、パートナーの真意(愛情)を信じてもらえないこと
ASの人が、周囲の人たちに対しては人柄が良いように見えることが多いので、周囲の人にその現状を訴えても信じてもらえないことが多いこと
などの二重の意味で、「信じてもらえない苦悩」を持った人の象徴として名づけられたものと思われます。
このような状態になられたら、大変深刻ですので、カウンセリングをお受けになることが必要と言えます。
場合によっては心療内科や精神科にて、効うつ薬や効不安薬を飲まれた方が、気持ちが楽になれるでしょう。
ASについての知識と理解が、ASの本人とパートナーの両方に必要となります。
お互いに夫婦関係を良くして行こうと協力し合うことができれば、上手くやって行ける可能性はぐっと高まります。
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