性格・気質、脳・神経、遺伝子(4)
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Cloninger (1993) は Grey の気質理論を発展し、独自の気質と性格の理論を包括的に構築しました。Cloninger によると、先天的な気質と後天的な性格は相互に影響しながら発達します。この「気質」とは刺激に対する自動的な情動反応のことで、大脳辺縁系により調整され、遺伝的に規定されています。具体的な気質として以下の4つが挙げられます。
新奇性追求 Novelty Seeking
新奇の刺激に対する探索、衝動的な決定、浪費、気分の変動、能動的な葛藤の回避など、行動の活性と開始に関する遺伝的な傾向です。
GreyのBASに似た行動のシステムです。
神経伝達物質としてドーパミンが想定されていて、ドーパミンD4受容体との関連が指摘されています。
損害回避 Harm Avoidance
未来の問題に対する不安や、未知の人物に対する恐怖のような受動的な行動の回避など、行動の抑制と中止に関する遺伝的な傾向です。
GreyのBISに似た行動のシステムです。
神経伝達物質としてセロトニンが想定されていて、セロトニン・トランスポーター5−HTTの遺伝子多型との関連が指摘されています。
報酬依存 Reward Dependence
社会的な愛着や他者の賞賛への依存のような、行動の維持と持続に関する遺伝的な傾向です。
神経伝達物質としてノルアドレナリンが想定されていますが、関連遺伝子は未だ発見されていません。
固執 Persistence
報酬依存の下位尺度から独立した因子で、忍耐強く一つの行動を行うような、行動の固着に関する遺伝的な傾向です。
特定の神経伝達物質や遺伝子は想定・発見されていません。
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銀座泰明クリニック