福味 健治(建築家)- コラム「ゴム手袋で握る寿司」 - 専門家プロファイル

福味 健治
木造住宅が得意な建築家。

福味 健治

フクミ ケンジ
( 大阪府 / 建築家 )
岡田一級建築士事務所 
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ゴム手袋で握る寿司

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●Coffee Break 2017-01-19 10:51

いつの頃からか、テレビでプロのお寿司屋がゴム手袋をして寿司を握るのを見かける様になりました。原因はノロウィルス対策である事は容易に想像できます。人が直接口にするものを素手で調理するのは如何なものかと言う配慮なのでしょう。
しかし私はゴム手袋で握られた寿司が何か汚いモノに見えて仕方がありません。
理由は、ゴム手袋さえしていれば、見た目清潔そうで仮に集団食中毒が発生していても、衛星管理はしていたと言い訳されてしまうからです。
素手であればそんな言い訳は通用しないので、病原菌の繁殖を防ぐ為衛生には特に気を遣うでしょう。逆説的ではありますが清潔な素手で握ってもらう方が、言い訳の為に着用したゴム手袋で握られる寿司より安全に思えてしまうのです。
証拠にゴム手袋を頻繁に目にする様になった今でもノロウィルスの脅威は収まっていません。
そもそもゴム手袋は汚いモノで手を汚さない様に着用するものです。奥さんが庭いじりする際、土が爪の間に入ってしまわない様にゴム手袋をする配慮と同じです。
外科医が手術の際にゴム手袋をするのも患者を雑菌から守る為ではありません。それであれば手を消毒すれば済む事です。素手の方が手先の感覚は遥かに敏感ですから、自分が患者なら消毒した素手で手術をして欲しいです。しかしそれは嘆願しても受け入れてもらえないでしょう。何故なら、ゴム手袋は医者を患者の持つ未知の菌から保護する為だからです。

あるクライアントの依頼で、ハウスダストを一掃する目的で、建物の仕上げ材全てを工業製品で仕上げて欲しいと相談を受けた事があります。工業製品の方が手入れが簡単で、仮に汚れても簡単に汚れを落とす事が出来ます。自然由来の製品は品質にばらつきがあり、手入れも大変です。しかし、ハウスダストが自然由来の製品を使った方が少なくなる保証はありません。人間そのものが大腸の中に大腸菌を蓄え菌の持つ有機物の分解能力を借りて人間自身のエネルギーを生み出している訳ですから、完全無菌な生活なんて夢物語で仮に実践してしまえば、栄養不良で死んでしまいます。
健康疾患で医師から、そう言う家を勧められている人であれば、それに近い設備は不可能ではありません。しかし、そうでない人は返って、自身の持つ免疫力や抵抗力を弱めてしまうか、又は病原菌でないモノに対して過剰反応してしまう体質を作る結果となります。

自然素材を礼賛する訳ではありませんが、所詮動物である人が住む家なのですから、自然由来の中に身を置くのが自然なのではないでしょうか。

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