対象:労働問題・仕事の法律
私は、社団法人に勤務しております。同僚の過失により発生した損害について、共同責任ということで負担するように求められたので、ご相談いたします。
組織の構成としては、団体の理事長及び理事の方々と、私の勤務する事務局の局長、私(役職は主任です)と同僚という構成になっています。
全年度の決算の際に同僚が、誤って過払い金(160万円)を発生させてしまいました。返済を求めたところ、相手先が解散してしまい、半額の80万円しか回収できませんでした。
結果として、回収できなかった分を、理事と事務局職員で負担し返済と本日夕方に突然通告されました。
それぞれの負担額は、ミスをした同僚が半額の40万。理事長、事務局長、私がそれぞれ10万の負担。残りの10万を理事の方が各1万ほどの負担ということです。そして、これらのことは連休明けの24日に団体の会議に提案され、決定するとのことです。
そこで、お伺いしたいのは、この様に業務上犯してしまった過失による損害は、どのような処分を与えるのが適当なのかということです。特に、最初に過失を犯した同僚が送金してしまった金額は、事務局長や理事長も承認した金額です。後に計算間違いに気づいて、過払い金があることに気づいたのところから、この問題が始まっています。その中で、過失の負担割合についても疑問を感じています。
本来なら、経過の説明があって、相当の期間も与えられて結論が出るものだと思います。しかし、今回のように退勤時間間際に一方的に通知され、休み明けに決定するという手法をとる、事務局長に対しても不信の念を抱かずには入られません。
相談する先のあてもなく、WEBでの質問をさせていただきます。ご回答お願いいたします。
深い悩みさん ( 北海道 / 男性 / 45歳 )
回答:1件
本田 和盛
経営コンサルタント
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従業員に対する損害賠償請求
凄腕社労士 本田和盛です。
従業員が過失により業務上の損害を会社に与えた場合に、会社は損害賠償請求をすることが可能です。しかし無制限にすることはできず、合理的な範囲にとどまります。その範囲は損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度に限られます。判例上もそのような取り扱いとなっています。
会社は業務遂行を通じて大きな利益を得ているのであり、損をしたときだけ労働者に損害を転嫁することは難しいです。
融資を担当している銀行員が、取引先の倒産によって焦げ付いた資金を、自己負担させられることがないのと同様に、振込みで過払いを発生させることも、通常想定されるミス(リスク)を超えるものではないので、基本的には労働者が負担する必要はない(ミスの態様や程度、ミスの頻度にもよりますが)と思います。
会社としては損害発生のリスクを低減する措置を講じておくべきで、その責任を労働者に一方的に押し付けることは信義則上、難しいと思います。今回は多段階の承認によってリスクが分散されていると考えられ、そのリスク分散によっても、事故が発生してしまったのですから、残余のリスクによって損失を発生させてしまった場合は、最終的な責任主体である会社が負担すべきでしょう。
相談者はミスをした当事者ではないので、連帯責任で負担させられる筋合いは、当初からありません。
ミスをした人、そのミスを見抜けなかった上司は、懲戒規定によって処分されることはありえます。また勤務評定において不利益に取り扱われることもありえます。しかし懲戒処分と損害賠償請求は別次元であり、今回のようなケースであれば、懲戒処分とマイナス査定で対応すべきと考えます。
評価・お礼
深い悩みさん
回答ありがとうございました。
事例もわかりやすく、心強く会議に臨むことができました。
幸い、理事の方の中にも、先生の回答に沿った形の話をしてくださる方もいらっしゃって、処分については行わないとの結論になりました。
今回の事柄は、当団体の事務局長による、パワハラのような感じがします。天下りで来た当初に「俺は偉いんだ、言うことを聞くように」って宣言するような方で、就業規則の変更や、手当ての削減などを一方的に実施した(一応理事長の承認はとっていますが)など、労使交渉もなく独善的に物事を進めるタイプです。
残念な上司が来てしまったとあきらめていますが、先生のアドバイスを得て、今後も戦って(本当は仕事に力を入れたいのですが)まいります。
本当にありがとうございました。
(現在のポイント:-pt)
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